表面粗さ測定機の選び方|触針式(接触式)と非接触式の違い
表面粗さ測定機の選び方|触針式(接触式)と非接触式の違い
この記事の結論
表面粗さ測定機は、「何を・どこまで・どこで測るか」で最適な方式が変わります。判断に迷ったときの目安は次のとおりです。
- 確実な数値管理・図面規格(Ra/Rz)への対応を最優先するなら → 触針式(接触式)
- 接触の影響を避けつつ、微細形状や面全体を評価したいなら → 非接触式
- 1台で幅広く使いたいなら → 触針式をベースに、必要に応じて非接触検出器を組み合わせる構成
以下では、両方式の違いを整理したうえで、失敗しない選び方を「5つの判断軸」で解説します。用途・業種別の選定パターンや、導入前チェックリストもまとめました。
表面粗さ測定機とは
表面粗さ測定機は、加工した部品表面の微細な凹凸を数値化し、品質を客観的に評価するための計測器です。かつては目視や指先の感触で判断していた「面の仕上がり」を、Ra(算術平均粗さ)やRz(最大高さ粗さ)といった規格化されたパラメータで管理できるようにするのが役割です。
自動車部品の摺動面、油圧・空圧機器のシール面、金型のキャビティ面、電子部品の接合面など、表面性状は摩耗・気密性・密着性・美観に直結します。そのため、加工現場から品質保証部門まで、幅広い工程で欠かせない測定機となっています。
なお、表面粗さ測定機は精密測定機器の一種です。輪郭形状・真円度・三次元測定なども含めた精密測定機器全般の選び方は、精密測定機器選定ガイドで体系的に解説しています。あわせてご覧ください。
測定の方式は大きく分けて、触針(しょくしん)を実際にワークへ当てて走査する「触針式(接触式)」と、レーザーや光を使って非接触で測る「非接触式」の2種類があります。次章で、それぞれの仕組みと違いを見ていきます。
押さえておきたい代表的な粗さパラメータ
機種選定の前提として、図面でよく使われるパラメータを整理しておきましょう。
- Ra(算術平均粗さ):基準長さ内の凹凸を平均した値。面全体のならし具合を表し、最も一般的に使われます。
- Rz(最大高さ粗さ):最も高い山と最も低い谷の高さを含む値。シール面や軸受面など、局部的なピークが機能に影響する箇所で重視されます。
- Rq(二乗平均平方根粗さ):凹凸の二乗平均。統計的なばらつきをより敏感に反映します。
- RzJIS(十点平均粗さ):JIS B 0601:2013で附属書に参考として記載されているパラメータ。旧規格(JIS B 0601:1994以前)の十点平均粗さとも厳密には区別され、現行のRz(最大高さ粗さ)とは定義が異なります。
- Sa・Sz(面粗さ):ISO 25178-2:2021で規定される面(3D)のパラメータ。非接触式による面測定などで用いられます。
これらのうち、どのパラメータで何をどこまで管理するかが、方式・機種選定の出発点になります。
触針式(接触式)と非接触式の違い
触針式(接触式)の仕組みと特長
触針式は、先端がごく小さな円すい状のダイヤモンド触針(スタイラス)を表面に接触させ、なぞりながら上下動を電気信号に変換して粗さを求める方式です。表面粗さ測定の最も基本的で歴史のある手法であり、図面や検査基準もこの方式を前提に整備されてきました。
触針式表面粗さ測定機については、JIS B 0651(追補1:2022)で特性が規定されており、得られるRa・Rzなどの輪郭曲線パラメータはJIS B 0601:2013で定義されています。そのため、JISに基づくRa・Rzなどの輪郭曲線パラメータを用いた品質管理に適していることが大きな強みです。
一方で、触針が物理的に触れるため、接触の影響を避けたい対象では注意が必要な場合があります。また、一般的な触針式表面粗さ測定機では線(プロファイル)による評価が基本ですが、面(3D)を測定できる触針式の機器もあります。
非接触式の仕組みと特長
非接触式は、レーザー共焦点方式や白色干渉方式、焦点変化方式などの光学技術を用いて、表面に触れずに凹凸を計測する方式です。近年、電子部品や精密金型、医療・光学分野の高機能化に伴って採用が広がっている手法です。
最大のメリットは、接触による傷を避けやすいこと、そして面(エリア)としての測定が得意なことです。面粗さ(3D)のパラメータSa・Szなど(ISO 25178-2:2021)で、微細形状や複雑面を可視化・定量化できます。方式や機種によりますが、非接触で測定できるため、面測定や自動測定と組み合わせて効率化しやすいのが特徴で、接触の影響を避けたい対象にも向きます。
ただし、光を使う特性上、鏡面や透明体、急峻な傾斜面、反射率の低い面などでは測定が難しくなる場合があります。また、触針式で管理してきた図面値との相関には注意が必要で、用途によっては両方式の使い分けや併用が現実的です。
【比較表】触針式(接触式)と非接触式
| 比較項目 | 触針式(接触式) | 非接触式 |
|---|---|---|
| 主な評価 | 線(プロファイル)のRa・Rzなど | 面(エリア)のSa・Szなど |
| ワークへの影響 | 接触するため、対象によっては傷などに注意 | 接触による傷を避けやすい |
| 得意な対象 | 図面でRa・Rzなどが指定された一般加工面など | 微細形状、面全体の評価、接触を避けたい対象など |
| 注意が必要な対象 | 軟質・易損面など | 光学特性や形状によって測定条件の確認が必要 |
| 測定速度 | 機種・条件による | 機種・方式・測定条件による |
| 主な用途 | 一般加工面・図面に基づく品質管理など | 微細形状・面測定・非接触測定など |
表面粗さ測定機の主な種類と特徴
同じ「表面粗さ測定機」でも、設置形態や機能によっていくつかのタイプに分かれます。方式(触針式/非接触式)と合わせて、どのタイプが自社の運用に合うかを押さえておくと選定がスムーズです。
据置(ラボ)型
定盤やコラムを備えた本格的なタイプで、高精度・高分解能・広い測定範囲を必要とする精密評価に向きます。温度や振動が管理された測定室での使用を前提とし、品質保証部門の基準測定などで活躍します。定盤サイズやコラム高さ、X軸の駆動範囲を用途に合わせて選べる機種もあります。
小型・可搬型
製造現場に持ち込んで、その場で測定できるコンパクトなタイプです。粗さ標準片を本体に内蔵し、現場で感度校正できるモデルもあり、検査室まで運ぶ手間を省けます。タッチパネル操作で扱いやすく、加工直後の抜き取り検査などに適しています。
粗さ・輪郭形状の複合型
表面粗さに加えて、輪郭形状(フォーム)も一台で測定できるタイプです。段取り替えの回数を減らせるため、多品種の測定を効率化したい現場で選ばれる傾向があります。粗さと形状の両面から品質を管理したい場合に有効です。
高速・自動測定対応型
自動測定による省人化や、高速走査に対応したタイプです。検査点数が多い現場で効果を発揮し、機種によっては非接触検出器を組み合わせて、触針式と非接触式の利点を使い分ける構成も可能です。
小坂研究所のサーフコーダシリーズも、小型モデルから据置の高精度モデル、粗さ・輪郭形状の複合モデルまでラインナップされており、用途に応じて選定できます。
表面粗さ測定機の選び方【5つの判断軸】
自社に合う一台を選ぶには、次の5つの軸で要件を整理すると迷いません。
① 測定対象(ワーク)の材質・形状
まず確認すべきは「何を測るか」です。金属の一般加工面であれば触針式が扱いやすく、樹脂・ゴム・コーティング・薄膜など、接触の影響を避けたい対象では非接触式が候補になります。ただし、微小な測定力に対応した接触式が適する場合もあります。また、溝底や微細パターンなど面として捉えたい形状は非接触式、規格値での線評価が中心なら触針式が基本です。
② 必要な測定パラメータ・精度
図面や検査基準でRaかRzのどちらが指定されているか、またRzJIS(十点平均粗さ)との違いを含めて確認します。現行のJIS B 0601:2013では、RaとRzが中心的なパラメータです。求める分解能や測定範囲(Z方向のレンジ)も、機種選定を大きく左右します。
③ 測定環境(ラボか、現場か)
温度・振動が管理された測定室(ラボ)で使うのか、製造ラインの近く(現場)で使うのかで、求める機種は変わります。現場では、持ち運びやすい小型・可搬タイプや、簡単操作でタッチパネルを備えたモデルが選ばれる傾向があります。定盤サイズやコラム高さなど、設置スペースの制約も事前に整理しておきましょう。
④ 測定スピード・省人化ニーズ
検査点数が多い、あるいは全数検査に近い運用では、自動測定・高速走査・段取り時間の短縮が効いてきます。近年は、自動測定による省人化に対応した機種や、非接触検出器を組み合わせて測定を効率化できる構成も登場しています。人手不足が課題となりやすい製造現場では、この軸の重要度が高まっています。
⑤ 校正・トレーサビリティ・規格対応
品質保証の観点では、校正のしやすさとトレーサビリティが欠かせません。粗さ標準片による感度校正、定期校正の運用体制、対応規格(JIS・ISO・DIN・ASMEなど)を確認しておくと、監査や取引先要求にも対応しやすくなります。導入後の校正サポートまで含めて検討することをおすすめします。
用途・業種別のおすすめ選定パターン
製造業で表面粗さ測定機を選ぶ際は、地域よりも測定対象と検査基準を基準に考えることが重要です。用途に応じた選定の目安を整理しました。
- 図面でRa・Rzが指定された一般加工面・機械部品:規格値による品質管理が中心になるため、触針式が候補になります。
- 微細形状や面全体を評価したい対象・接触を避けたい対象:傷を避けつつ面(3D)で捉えたいケースでは、非接触式が候補になります。
- 多品種・多工程で幅広く測りたい場合:触針式をベースに、必要に応じて非接触検出器や粗さ・輪郭形状の複合機を組み合わせる構成が有効なケースがあります。
いずれのケースも、現在の図面指示・検査基準・測定運用を起点に方式を決めるのが、失敗しないコツです。
よくある選定の失敗と回避のポイント
表面粗さ測定機の選定でつまずきやすいのは、次のようなケースです。事前に押さえておくと、導入後の「思っていた測定ができない」を防げます。
図面の規格・パラメータの確認不足
RaとRz、さらにRzJIS(十点平均粗さ)を混同したまま機種を選ぶと、測定値の解釈がずれてトラブルにつながることがあります。図面に記載された規格の年版とパラメータを、選定の起点として必ず確認しましょう。
測定環境を考慮しない導入
高精度なラボ型を、振動や温度変化の大きい現場にそのまま導入してしまうと、性能を発揮できないことがあります。逆に、精密評価が必要なのに簡易機を選んでしまう例もあります。使用場所と目的を分けて考えることが大切です。
線測定と面測定の取り違え
面全体の性状を評価したいのに線測定機を選ぶ、あるいはその逆のケースです。「線(Ra/Rz)で管理するのか、面(Sa/Sz)で捉えるのか」を明確にしてから方式を決めると、選定の精度が上がります。
校正・サポート体制を後回しにする
本体スペックだけで決めてしまい、校正の運用や導入後のサポートを見落とすと、長期の品質管理で困ることがあります。校正のしやすさやサポート体制も、選定の重要な要素として比較することをおすすめします。
導入前に確認したいチェックリスト
- 図面で指定されている粗さパラメータ(Ra/Rz/RzJIS 等)と規格年版
- 測定対象の材質・硬さ・形状(線評価か面評価か)
- 必要な測定範囲・分解能
- 使用場所(ラボ/現場)と設置スペース・環境条件
- 想定する測定点数と、自動化・省人化の必要性
- 校正体制・定期校正の運用と対応規格
- 既存の検査データとの整合・移行のしやすさ
- 導入後の保守・サポート・オペレーター教育
これらを整理したうえで比較すれば、方式選定と機種選定の精度が大きく上がります。
よくある質問(FAQ)
まとめ
表面粗さ測定機は、測定対象・必要精度・測定環境・スピード・校正体制という5つの軸で要件を整理すれば、触針式(接触式)と非接触式のどちらが自社に合うかが見えてきます。図面規格の確実な管理には触針式、軟質材や微細形状の面測定には非接触式が基本の目安です。
関西圏で表面粗さ測定機の選び方に迷われたときは、小坂研究所の製品を取り扱うコントロールズ機器(大阪市西区)へご相談ください。図面規格や測定運用に踏み込んで、最適な一台をご提案します。表面粗さ以外の測定機も含めた選び方は、精密測定機器選定ガイドもご参照ください。
表面粗さ測定機の選定は、コントロールズ機器へご相談ください
コントロールズ機器(大阪市西区)は、精密測定機器メーカーである小坂研究所を取扱メーカーとして、表面粗さ測定機「サーフコーダ」シリーズをはじめとする測定機の選定をお手伝いしています。触針式・非接触式のどちらが自社に合うか、図面規格や測定運用に踏み込んでご提案できるのが強みです。
「今の検査基準に合う機種が知りたい」「現場で使える一台を探している」「校正まで含めて相談したい」——そのような段階からのご相談で構いません。関西圏(大阪・東大阪・八尾・堺・京都・滋賀・兵庫・奈良・和歌山ほか)を中心に、製造業の皆さまの測定・品質管理を支援します。表面粗さ測定機の選び方でお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。
なお、当社では一般的な機械加工部品向けの表面粗さ測定機に加え、半導体ウェーハ、MEMS、薄膜・機能性フィルムなどの超微細構造を対象とした微細形状測定機も取り扱っています。ナノメートルレベルの段差・粗さ・形状などの表面性状評価に対応し、最先端デバイスや高機能材料の品質評価をサポートします。