表面粗さ測定値のバラつきや設備間・企業間のデータ不整合を解消|測定条件・測定環境を総点検
表面粗さ測定値のバラつきや設備間・企業間のデータ不整合を解消|測定条件・測定環境を総点検
「同じワークを同じ測定機で測っても、測るたびに Ra や Rz が変わる」。「自社と取引先、あるいは拠点Aと拠点Bで同じ製品を測ったのに、測定値が食い違う」。表面粗さの現場では、この2つの悩みがよく混同されます。しかし、両者は原因がまったく異なります。
前者は同一測定機での繰り返し性の問題、後者は測定機や場所・会社が変わったときの再現性(設備間・企業間の一致性)の問題です。原因を切り分けないまま対策すると遠回りになります。本記事では、表面粗さの測定値がばらつく原因を「繰り返し性」と「設備間・企業間の再現性」に分けて整理し、測定条件と測定環境の総点検という切り口で、データ不整合を解消する手順までまとめました。関西で精密測定機器(小坂研究所 サーフコーダ)を取り扱う、大阪市西区のコントロールズ機器が解説します。
結論:まず「繰り返し性」か「設備間・企業間の不整合」かを切り分ける
先に結論です。ばらつきの相談は、次のどちらの問題かを見極めることから始めると、原因にたどり着きやすくなります。
| 症状 | 分類 | 主に疑う原因 |
|---|---|---|
| 同じ測定機で測るたびに値が変わる | 繰り返し性 | 検出器・駆動部の状態、測定位置の違い、ワーク表面の汚れ・キズ |
| 別の測定機・別の会社/拠点で値が合わない | 設備間・企業間の再現性 | カットオフ値やフィルタ・触針先端半径・校正状態・判定ルールなどの「条件差」 |
ポイントは、触針の先端半径そのものは、同一測定機の繰り返し性のばらつき要因にはなりにくい(毎回同じ針で測るため)一方、測定機ごとに先端半径や条件が違えば設備間・企業間の不整合要因になるという点です。以下、それぞれの原因を具体的に見ていきます。なお、加工条件の変化・工具摩耗・ワーク材質・加工面の面内ばらつきなど、加工側の要因で値が変わることもあるため、測定側とあわせて確認してください。
そもそも「繰り返し性」と「再現性」は何が違うのか
計測の分野では、測定値のばらつきを次のように分けて考えます。
- 繰り返し性:同一の測定機・測定者・条件で、短時間のうちに同じ対象を繰り返し測ったときのばらつき
- 再現性:測定機・測定者・場所・時期などの条件が変わったときのばらつき
「同じ測定機なのに毎回変わる」は繰り返し性、「設備間・企業間でデータが合わない」は再現性の話です。両者は原因も対策も異なるため、切り分けが重要になります。設備間・企業間のデータ不整合は、多くの場合測定条件のそろえ方で大きく改善できます。
原因一覧【繰り返し性/設備間・企業間で切り分け】
自社の状況に近い行から確認してください。
| 分類 | 主な原因 | 内容 |
|---|---|---|
| 繰り返し性 | 検出器(ピックアップ)の状態 | 取り付けのガタ、変換部のドリフト、レンジ設定 |
| 繰り返し性 | 駆動部・送り装置 | 真直度、ガタ・スティックスリップ、速度の乱れ、振動 |
| 繰り返し性 | 測定位置の違い | 毎回違う場所を測り面内ばらつきを拾う |
| 繰り返し性 | ワーク表面の汚れ・キズ | 油・切りくず・指紋・打痕を突起として検出 |
| 設備間・企業間 | カットオフ値λc・評価長さの差 | 拾う波長成分が変わりRa・Rzが増減 |
| 設備間・企業間 | λs・フィルタ方式の差 | 高周波成分の処理が変わり値が食い違う |
| 設備間・企業間 | 触針先端半径の差 | 谷の拾い方が変わる(とくに小粗さ面) |
| 設備間・企業間 | 新旧規格Rzの取り違え | 定義違いで数値が食い違う |
| 設備間・企業間 | 校正状態・標準片の差 | 基準そのものがそろっていない |
| 設備間・企業間 | 合否判定ルールの差 | 16%ルール/最大値ルールの不一致 |
| 共通 | 温度・振動などの測定環境 | 微小外乱が波形に重畳 |
繰り返し性(同一測定機)のばらつき原因
同じ測定機で測るたびに値が変わる場合は、触針の先端半径よりも、検出器・駆動部の状態、測定位置、ワーク表面の状態を先に疑うのが定石です。
検出器(ピックアップ)の状態
触針式測定機の検出器(ピックアップ)は、触針が上下する動きを電気信号に変換する部分です。ここに取り付けのガタがあったり、変換部の状態が不安定だと、同じ面を測っても信号がふらつき、繰り返し性が低下します。検出器のケーブルの取り回しや、測定レンジ(測定範囲)の設定が対象の凹凸に対して不適切な場合も、値が安定しない原因になります。まずは検出器がしっかり固定されているか、レンジ設定が適切かを確認します。
駆動部・送り装置(真直度・ガタ・速度)
駆動部(送り装置)は、検出器を一定速度で水平方向に動かし、粗さ波形を描かせる部分です。この送り軸の真直度が、測定の基準線そのものになります。真直度が悪かったり、送りにガタ・スティックスリップ(引っかかりながら進む現象)・振動があると、粗さ成分に不要なうねりや傾きが混じり、測定のたびに波形が変わってしまいます。
とくに、測定基準を機械側に持つ独立基準式(スキッドレス)の検出器では、駆動部の真直度が測定値へ直接影響します。送り速度が機種の推奨から外れている場合も波形が歪むため、駆動部の状態と速度設定は繰り返し性の要となります。
ワーク測定位置の違い
加工面には面内のばらつきが必ず存在します。毎回違う位置を測れば、その面内ばらつきをそのまま拾い、値が変動します。測定位置を決めて記録するか、あらかじめ決めた複数箇所を測って評価する運用にすると、判断が安定します。
ワーク表面の汚れ・キズ
測定面に油・切りくず・研磨カス・指紋などが付着していると、それらを突起として検出し、突発的に大きな値が出ます。バリや打痕がある位置を測れば当然値も大きく出ます。測定前の清掃と、キズ・打痕を避けた位置取りは、地味ですが繰り返し性に効きます。
設備間・企業間でデータが合わない原因(再現性)
自社と取引先、あるいは拠点間で同じ製品を測っても値が食い違う——。この設備間・企業間のデータ不整合は、多くの場合測定条件の違いが原因です。装置が正常でも、条件がそろっていなければ値は一致しません。
カットオフ値λc・基準長さ・評価長さの差
カットオフ値λc は、フィルタで粗さ成分とうねり成分を分離するときの境界となる波長です。λc の設定が変われば評価する波長成分が変わるため、Ra・Rz の値も変化します。非周期的な面では、想定される Ra からカットオフ値を選ぶ考え方が JIS B 0633:2001 に示されています。現場でよく使う範囲の目安は次のとおりです(詳細は規格の表を参照してください)。
| Ra の範囲(μm) | カットオフ値 λc(mm) |
|---|---|
| 0.02 超 0.1 以下 | 0.25 |
| 0.1 超 2 以下 | 0.8 |
| 2 超 10 以下 | 2.5 |
| 10 超 80 以下 | 8 |
切削面や研削面は Ra が 1μm 前後になることが多く、その場合は λc=0.8mm を選ぶのが標準的とされています。また、一般的な評価では評価長さは基準長さ(=λc)の5倍とします(例:λc0.8mm→評価長さ4mm)。設備間・企業間では、このλc・基準長さ・評価長さがそろっていないだけで値が食い違います。図面や製品技術情報に指示があればそれに合わせ、なければ関係者間で設定を統一することが不整合解消の第一歩です。
λs(短波側カットオフ)・フィルタ方式の差
粗さ曲線は、長波側のλc だけでなく、ノイズや過度に細かい成分を除く短波側カットオフλs によっても切り出されます。λs の設定やフィルタ方式が測定機・モードによって異なると、同じ面でも高周波成分の拾い方が変わり、値の差につながります。現在の輪郭曲線フィルタは JIS B 0634:2017 に基づくガウシアンフィルタが標準とされており、旧来のアナログフィルタとは特性が異なります。設備間で値を比較する際は、λc だけでなく λs やフィルタ方式もそろっているかを確認してください。
触針先端半径の差
触針の先端半径は一般に 2μm・5μm・10μm といった規格値があり、細かい谷まで拾えるかどうかを左右します。測定機ごとに先端半径が違えば、谷の拾い方が変わり、値が食い違う要因になります。一般的な目安として、Ra が 0.5μm より大きい、または Rz が 3μm より大きい面では、先端半径 5μm を用いても測定結果に大きな差は生じにくいといわれています。一方、超仕上げ面や鏡面など粗さの小さい面では、先端半径の違いが値の差として表れやすくなります。設備間で比較するなら、先端半径の条件もそろえるのが理想です。
新旧規格でRzの定義が違う点
Rz は規格改定で意味が変わっているため、取り違えるとそのまま数値の食い違いになります。2001年以降の現行JIS(B 0601:2013 など)では Rz=最大高さ粗さ(旧規格の Ry に相当)を指します。一方、1994年版の Rz は「十点平均粗さ」(現在の Rzjis)を意味していました。古い図面や社内基準の「Rz」を扱うときは、どの年版の規格に基づく指示かを必ず確認しましょう。
校正状態・合否判定ルールの差
測定機ごとに校正状態が異なれば、そもそもの「基準」がそろわず、値も一致しません。また、合否の判定ルールがそろっていないと、同じ波形でも合否が分かれます。JIS では、要求値に対する合否判定として「16%ルール」と「最大値ルール」があります。16%ルールでは、上限値が指定されている場合は要求値を超える測定値が16%以下、下限値が指定されている場合は要求値を下回る測定値が16%以下であれば要求を満たすと判断します。最大値ルールでは、対象面の測定値が一つでも要求値を超えないことを求めます。図面指示(最大値記号の有無など)を確認し、判定基準を統一しましょう。
測定条件を統一する「総点検」チェックリスト
設備間・企業間のデータ不整合は、次の条件をそろえるだけで大きく改善します。取引先・拠点間で共有する測定手順書に落とし込むのがおすすめです。
- カットオフ値λc・基準長さ・評価長さ(=基準長さ×5)を統一しているか
- λs(短波側カットオフ)・フィルタ方式(ガウシアン等)をそろえているか
- 触針の先端半径の条件をそろえているか
- Rz が新旧どちらの規格定義か確認・統一しているか(現行=最大高さ粗さ)
- 測定方向(原則:加工目に直交)を統一しているか
- 合否判定ルール(16%ルール/最大値ルール)をそろえているか
- 各測定機の校正状態・標準片の基準がそろっているか
- 測定位置・清掃手順を手順書で共有しているか
測定環境を整える(温度・振動・据付)
条件をそろえても値が安定しない場合は、測定環境を見直します。粗さを高精度で測る場合には、床振動や近くの機械の稼働、空調の風、温度変化といった微小な外乱が波形に重畳することがあります。とくに Ra が小さい鏡面領域では影響が出やすくなります。除振台の使用、測定タイミングの工夫、恒温環境での測定などが有効です。
あわせて、検出器の取り付けや、送り装置とワーク面の平行度(レベリング)といった据付・段取りも確認します。ワークが傾いたまま測ると傾き成分が波形に混入するため、測定前のレベリング(水平出し)を丁寧に行うだけで安定することがあります。
日常点検と校正で「基準」をそろえる
繰り返し性・再現性のどちらの対策でも土台になるのが、日常点検と校正です。標準片(粗さ標準片)を使った日常点検で測定機の状態を確認し、必要な周期で校正を実施することで、測定結果の信頼性を維持できます。なお、日常点検と校正は目的が異なります。日常点検は日々の性能確認、校正は指示値と標準・基準との関係を確認して結果を記録する行為です。とくに設備間・企業間で値をそろえたい場合は、各測定機の校正を同じ基準で管理しておくことが重要です。校正の考え方や測定機の選び方については、別記事「精密測定機器の選び方・校正ガイド」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
関西の製造現場で拠点間・取引先間の測定データをそろえる
関西圏は、東大阪・八尾・堺を中心とした金属加工・精密部品加工の集積地として知られています。多品種少量で高い寸法・表面品質が求められ、サプライチェーンの中で受入検査・出荷検査のデータをやり取りする場面も多い地域です。京都・滋賀の電子デバイス関連や阪神エリアの各種製造業を含め、「同じ製品なのに自社と取引先で表面粗さの値が合わない」という不整合は、品質保証や取引上のトラブルにつながりやすい傾向があります。
こうした設備間・企業間のデータ不整合は、測定機の性能差よりも、測定条件のそろえ方で改善できるケースが少なくないといわれています。カットオフ値・フィルタ・触針条件・判定ルール・校正基準を関係者間で共有し、測定手順書として標準化しておくことが、拠点間・取引先間のデータ一致への近道です。
大阪市西区のコントロールズ機器は、1952年創業の産業機器専門商社として、小坂研究所の精密測定機器(サーフコーダ 表面粗さ測定機など)をはじめ、表面粗さ・輪郭形状・真円度・三次元座標測定に対応する機器をお取り扱いしています。堺市にも拠点を構え、関西の製造現場に近い距離でご相談に対応しています。測定値のばらつきや設備間・企業間のデータ不整合でお困りの際、用途に合った測定機の選定については、お気軽にお問い合わせください。